総合診療外科の手術について②<虫垂炎>%e7%b7%8f%e5%90%88%e8%a8%ba%e7%99%82%e5%a4%96%e7%a7%91%e3%81%ae%e6%89%8b%e8%a1%93%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6%e2%91%a1%ef%bc%9c%e8%99%ab%e5%9e%82%e7%82%8e%ef%bc%9e

総合診療外科の手術について②<虫垂炎>

~たかが虫垂炎、されど虫垂炎:ひとつのキズで腹腔鏡下虫垂切除術~

 

 大腸の入口に盲腸があり、その盲端(行き止まり)の先に紐状についている臓器が虫垂です。一般的に「盲腸」といわれる病気の正式名称が虫垂に炎症を起こす「虫垂炎」です。一般的に虫垂は切除してもほとんど症状がなく、胃を切除したあとのように痩せたり、直腸を切除したあとに便がゆるくなるようなことはありません。しかし、なんらかの免疫機能を持っていることも推測されており、新事実が解明されたら新たな脚光をあびる小さくも偉大な臓器かもしれません。

 さて、虫垂は右下腹部にあるのですが、虫垂炎を起こすと、最初はみぞおちが痛くなって、徐々に右下腹部が痛くなります。(最初から右下腹部の痛みのこともあります)なので、胃炎や腸炎、胆石発作と間違われることがあり、ベテランの医師でも経過を見なければ診断がつかないこともあります。また、診断が遅れると腹腔内に膿瘍を起こして重症化することがあり、医学が進歩した現在でも注意が必要な病気です。

 以前は虫垂炎と診断すると緊急手術をしておりましたが、最近では抗生物質によりほとんどの虫垂炎が抑え込める(俗にいう「薬で散らす」)ことが分かってきました。そのため、虫垂に糞石が詰まっていたり膿瘍を形成している場合でも、手術で虫垂を切除したほうがよいのか、抗生物質で封じ込めた後に手術した方がよいのかは議論が分かれるところです。 

以上のことから、緊急手術をするのか、抗生物質で散らすかについては、患者さんのご都合に合わせて対応しております。薬で散らした場合、また虫垂炎が再燃することがあるので、炎症がおさまる3か月後以降に患者さんのご予定に合わせて手術で虫垂を切除することが多いです。(もちろん患者さんのご希望があるときです。)

 当科では腹腔鏡下虫垂切除術(小さなキズ3つ)を行っておりますが、場合によっては単孔式腹腔鏡下虫垂切除術(小さなキズ1つ)で行うことが可能です。術中所見で炎症の具合や癒着の程度をみて決めております。

お忙しい患者さんでしたら、ご予定をお聞きして待機手術を入れますので、どうぞご相談ください。

(文責) 外科 塩井義裕