臨床研修kensyu

地域医療研修を修了した研修医の声(令和2年度)

⑩ 岩手医科大学附属病院 研修医 渡辺 祥

 今回は、岩手医科大学附属病院研修カリキュラムの地域医療研修として、千厩病院総合診療外科に1か月間お世話になりました。

 千厩病院総合診療外科で研修させてもらい感じたことは、本当に「総合診療」外科なんだなってことです。総合診療外科では、消化器外科疾患のみならず、骨盤骨折や帯状疱疹、心不全までさまざまな病態の患者様が入院されていました。わからないことが多かったですが、指導医の塩井先生・石岡先生にはたくさんのことを教えていただき、大変お世話になりました。大学では、経験できなかった胸腔ドレナージや虫垂炎手術の執刀までとても貴重な経験をさせていただきました。

 救急外来では、千厩病院の救急車を断らない精神に感動しました。千厩病院周辺で救急の指定病院は千厩病院と磐井病院しかなく、地域のことは地域でできるだけ完結して、中核病院の医療負担を増やさないようにする必要がありました。必然的に、千厩病院では対応できない重症患者もいました。多種多様な主訴で救急外来に受診される患者様のうち、千厩病院で対応困難というのをどの段階で判断するか、対応困難となったときにどこの病院に搬送するか、さまざまな問題があり、地域救急医療の難しさを感じました。重症患者を診察したときにどう行動すべきかを議題とした多職種カンファレンスにも参加させていただきました。積極的な意見交換がされており、医師だけでは思いつかないような打開案も出て、とても勉強になりました。

 1か月間の短い間でしたが、中身の濃い充実した研修をさせていただきありがとうございました。

        写真中央

⑨ 国立国際医療研究センター 研修医 川西 朗弥

 4週間の中で様々な症例を経験させていただきました。千厩病院では、外科診療科長の塩井先生のもと、腹腔鏡手術や開腹手術、非常に高いレベルで手術が行われており、非常に感銘を受けました。手術では麻酔管理や助手など、様々な手技を経験させていただきました。また、手術のみならず、広く内科疾患や、介護のレスパイト入院など、様々な患者さんの入院受け入れをしており、地域のニーズに根付いた医療を経験することができました。

 週に1回程度は救急外来業務を行いました。普段の研修病院では、必ず上級医の先生にコンサルトすることができる環境でしたが、千厩病院では自分が主体となって入院、帰宅の判断、今後の治療方針を決めなくてはならず、大変貴重な経験となりました。救急外来での当直を通じて、自分のこれまでの勉強に自信をつけることができた一方、自分の不勉強さ、ふがいなさを実感する一面もありました。これまでの2年間の初期臨床研修生活の中でも最も貴重な経験の一つになったかと思います。

 これまで自分が過ごしてきた環境とは大きく違う場所で、たった一人で研修を始めましたが、外科の塩井先生、石岡先生をはじめとした先生方、また、コメディカルの皆様、事務の皆様の支えもあり無事4週間研修を終えることができました。この場をお借りして改めて御礼を申し上げます。この4週間は2年間の研修生活の中でも非常に貴重な4週間になりました。

 この経験を忘れることなく、今後の自分の人生に活かして、より良い意志を目指そうと思います。

        写真右

⑧ 岩手県立磐井病院 研修医 吉岡 拓哉

 千厩病院泌尿器科にて一ヶ月間の地域医療研修を終了いたしました。

 泌尿器科では主に入院患者さんの管理、外来業務、透析回診に携わらせていただきました。また週に一回の夜間当直と日中の救急当番にて救急患者の対応も勉強させていただきました。医療的な知識はもちろん多く享受させていただきましたが、なによりも地域医療の特徴や課題を現場で感じることができました。

 地域医療の特徴として、患者層がかなり高齢であることがあります。そのため廃用症候群、栄養不良などが背景にあること、予防すべきであることが多々あり、理学療法士や栄養管理士などとも密な連携が必要とされます。急性期の病院よりも病棟にて他職種の方とコミュニケーションを取ることが多かったと感じます。

 地域医療の課題としては、病診連携にあると思いました。急性期の病院であれば周術期が過ぎれば速やかに慢性期病院に転院していきます。しかし千厩病院は決して超急性の病院というわけではありませんがそれでも、リハビリと転院調整のため退院が長引き、ベッドコントロールに頭を悩ませるといった場面を何度か見かけました。周辺の入院可能な地域の病院とのより密な連携が必要だと感じました。

 2020年現在、入院における医療費は年々膨らんでおり、国全体の歳入は毎年おおよそ102兆円ですが、2016年に医療機関に支払われた医療費は、42.6兆円となっています。そのうち、入院費が約16兆円と医療費全体の約38%を占めています。そのため入院費を削減するため国は看取りなど在宅での診療を促しております。訪問診療には一度同行させていただきました。そこでは病院内での診療に加え家族の介護能力や地域の支援団体の協力などさまざまな要素が医療に加えられていました。訪問診療の必要性を学ぶとともに難しさや課題を肌で感じることができました。

 これからの医療では地域医療、訪問診療は考えざるを得ない分野になってくると思います。そこでこの一ヶ月で学んだことを生かしていければと思います。

 一ヶ月間ありがとうございました。

        写真左

⑦ 岩手県立中央病院 研修医 増尾 隆行

 2ヶ月間、千厩病院総合内科で地域医療研修させていただきました。この2ヶ月で主に次の2点について学ぶことができたと思います。

 1つ目はプライマリケアについてです。中央病院では各分野の専門医が対応している内科疾患を、総合内科では一手に引き受けています。専門分野はなく、全疾患を見るため幅広い知識が求められます。また、専門施設へはどのような症例を紹介すれば良いのか、侵襲的治療の適応がこの症例にあるのかなどは、中央病院にいるとあまり意識しない視点でしたので大変勉強になりました。

 2つ目は高齢者医療についてです。あらゆる慢性疾患を抱えた高齢者は、最終的に食べることも難しくなりますし、身の回りのことも難しくなります。これらの問題は医師だけでは解決できず、第一に家族のサポートが必須です。そして看護師、ST、PTOT、栄養士など様々な職種の医療スタッフに加え、ケアマネージャーなどの行政機関や介護施設など、あらゆる職種の連携が必要とされることを、地域医療を通して学びました。

 また、2ヶ月間を通し当直や日々の診療では中央病院にいるときと比べより決定権と責任を持たせていただきまして、その点でも大変勉強になりました。

 2ヶ月間で学んだことを活かし今後の診療を行なっていきたいと思います。

         写真左

⑥ 岩手県立中央病院 研修医 猪股 奈々

 8、9月の2か月間、多くの方々のご指導、サポートのもと総合内科で研修させていただきました。

 言葉通り“総合”内科であり、本当に様々な患者さんが入院されていました。感染症や心不全など急性期の疾患から、脳卒中後のリハビリ入院、社会調整が必要な患者さんと、多種多様な症例を経験しました。病棟業務では自分で検査や治療を考える機会を多く与えていただき、医療に関わる責任の重さを改めて実感しました。血液検査一つとっても、何を疑いどの項目を提出し精査していくか、結果をどのように解釈するか、血液検査の間隔はどれくらいがベストか。それぞれに根拠を持って診療にあたる難しさ、そして診断がつき治療に結び付いたときはとてもやりがいを感じました。

 研修を終えた今一番印象に残っていることは、地域医療の温かさです。医師同士の他科への相談しやすい環境や、コメディカルとの連携、そしてなにより患者さんの気持ちに寄り添って診療していると感じました。病棟の患者さんと看護師さんの距離の近さには何度もハッとさせられました。治療としての医療だけでなく、気持ちに寄り添う大切さを目の当たりにしました。

 至らぬ点も多々ありご迷惑をおかけしましたが、指導医の先生をはじめ多くの先生方、多職種・事務の方々には本当にお世話になりました。将来また千厩での医療に携わらせていただければなと思います。ありがとうございました。

         写真左

⑤ 岩手県立中央病院 研修医 松永 拓

 岩手県立千厩病院は両磐医療圏で2番目の病床を持つ地域病院であり、救急としては二次救急医療機関に指定されています。病床は一般病床に加えてリハビリ病床と包括ケア病床があり、地域における超急性期から回復期、慢性期までの幅広い役割を担っています。

 研修は総合診療内科で2カ月間お世話になりました。肺炎や尿路感染症といったcommon diseaseの治療、癌性疼痛のコントロール、栄養計画の立案、社会的な調整など、先生方やコメディカルの方々に助けていただきながら、主体的に診療に関わることができました。病状説明として患者さん本人やご家族とお話しする機会もありましたが、その度に自分の知識不足や考えの至らなさを痛感し、反省させられることばかりでした。また、地域病院ならではの、医療者と患者さんとの信頼関係や距離の近さやを感じ、微力ながらもその一端を担わせていただくことへの責任を改めて感じました。

 岩手県立千厩病院で経験させていただいたことを糧にして、今後も日々勉強していきたいと思います。

         写真左

④ 国立国際医療研究センター 研修医 北村 駿

 今回、地域研修として4週にわたり岩手県立千厩病院で研修を行わせていただきました。

 診療科としては泌尿器科にお世話になり、病棟だけではなく外来や透析も経験させていただくことができました。救急外来はこれまで経験していても専門領域の外来は携わったことがなかったので、ほとんど方針は上級医に立てていただいてしまっておりましたが大変勉強になりました。また透析はこれまでほとんど触れる機会がなく今回様々な新たな経験をすることができたので、定着させ今後に応用することができればと思います。

 普段の業務のみならず、訪問診療や陸前高田の視察にも伺わせていただきました。訪問診療ではまもなく90歳を迎える男性のご自宅を訪問、ご長男夫妻の姿もあり家族の支えがあっての訪問診療であることを感じました。高齢化に伴い老々介護の状態になっている世帯の増加が想像され、また家族構成の変容も相まって訪問診療が困難な場合も多くなってきていることも考えさせられました。また陸前高田の視察においては、現地での車窓から、そして施設周辺を実際歩いてみてまもなく10年の節目を迎えようとする今も復興はまだまだ途上であることを目の当たりにし大変貴重な経験となりました。

 以上のようにこの4週間で大変多くの貴重な経験をさせていただきましたが、先生方を始めコメディカルの皆さまや病院を支えるスタッフの方々のお力なしには叶わないものでした。ご迷惑をお掛けしたことも多々あったかと思いますが本当にありがとうございました。

      写真中央

③ 国立国際医療研究センター 研修医 阿部 桜子

 コロナが猛威を奮っており、様々な病院で受け入れ制限をしている中での研修、大変感謝しております。それも地域の感染症指定病院になっており、万全な感染対策を行っている上での判断だと感じました。3階の病棟をまるまる感染症病棟として準備を整えており、より一層地域の要を担っていることを実感しました。

総合内科で4週間の研修を終えて様々な内科疾患を経験することができました。医師数が少なく、できる検査や処置が限られている環境で最善の治療を導き、時には転送を考えなければならない状況は、元いた病院では考えられない状況でした。そういった慣れない状況で、入院患者は帰宅困難な高齢者ばかり。どのように地域にお返しするか、周囲のサポートを考えての治療方針の決定は大変勉強になりました。

ドクター、ナース、コメディカル、スタッフ、携わってくださった皆さまに全員感謝申し上げます。今後もこの経験をもとに、どこにいても患者、地域に寄り添った医療を提供したいです。

         写真左

② 国立国際医療研究センター 研修医 乘松 裕

 私は地域医療研修の一環として岩手県立千厩病院で研修させていただきました。普段の東京での研修と違った地域の中核病院での研修は、多くの学び、新たな発見、そして貴重な出会いがありました。主体性に携わる機会も多々あり、とても実りのある研修になったと感じています。

 研修は泌尿器科で4週間お世話になりました。泌尿器科疾患や透析といった今まで経験する機会が少なかった疾患に触れることができました。排尿障害など日常生活のQOLに大きな影響を与える泌尿器科疾患の診療・治療、透析診療、そして泌尿器科的手技等を経験しました。また病棟では、脳梗塞や尿路感染症などcommon diseaseの患者さんや胆がんの患者さんなどの治療計画、退院に向けてのsocial面の調整など、患者さんやそのご家族の生の声を聞きながら、入院から退院まで診療を経験することができました。そして指導医やコメディカルの方々に助けて頂きながら携わり、患者ごとの背景やライフスタイルを元に診療計画を考えることができました。

 また週に1回程度の当直、また日中の救急対応などで救急外来業務も取り組みました。重症度の見極めや、必要な検査項目の選別、入院適応、そして初期の治療計画まで、自分が主体となり判断を下す場面は初めての経験でした。この「自分で考える」という経験は、自分の未熟さを痛感し、自分の苦手な部分を発見することができるだけでなく、自ずと勉強する気になり向上心を掻き立てられました。

 普段研修をしている環境から踏み出して、1人で初めての土地・環境で研修を行うことは、最初はとても不安でした。しかし、医師、そしてコメディカルの方々や事務の方々を含めたすべての職員との距離が近く、働きやすい環境であり何度も助けられました。自分と違った環境で働いてきた先生方との出会いは、日本の医療に携わっていく身として、どこに行っても今後活かすことができると感じています。千厩病院での経験を糧に、これから今まで以上に成長していけるよう頑張ってまいります。

      写真中央

① 岩手県立中央病院 研修医 手島 航

 千厩病院の総合内科は岩手県立中央病院と異なり、診療科が細分化されていないので、基本的な内科疾患は全て診ていくことになります。将来自分も何かしらの専門科で勉強していくことになると思いますが、自分の専門外の疾患に対処することになったときにどうアプローチすればよいのか、どこまでならその疾患の専門施設でない病院で診療を行えるのか判断できなければ、医師が不足している地域で診療を行うのは難しいです。

 また今までは疾患を治療することが最優先で、恥ずかしながら患者さんの社会的背景に対して積極的に考えていませんでした。しかし、退院後にどういう生活を希望し、それが実現可能かどうかを、入院時あるいはその前から患者さん本人やご家族、ケアマネージャーさんなどと話し合っておかなければ、退院まで見据えた診療を行っているとはいえないと千厩での研修で感じました。

 2ケ月という短い期間でしたが、千厩病院の研修で得た知識や経験を活かして今後の診療を行っていきたいと思います。

         写真左

初期臨床研修ページへ