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地域医療研修を修了した研修医の声(令和3年度)

② 国立病院機構東京医療センター 研修医 近藤 亮一郎

 今回地域研修にて総合診療外科で8週間研修させていただきました。同科では少人数のスタッフながら、多岐にわたる手術を行なっており、救急診療では救急車を断らない環境でとても充実した研修をさせていただきました。一般外来や救急外来、当直では東京では経験できない症例を数多く診療できました。高齢でもバイクに乗ったり山で仕事や力仕事をされていることが多く、外傷が多かったほか、マイナー外傷や虫刺傷、動物咬傷などこれまで経験が少ない症例があり、とても勉強になりました。またその他に、内科的疾患としては、東京では病院が多く喘息やCOPDなどコントロールが良好なケースがほとんどで増悪の経験が少なかったですが、こちらでは高齢者のみの家庭も多くいるため内服コンプライアンスが悪いことや通院へのハードルが高く、増悪してから搬送というケースを多く経験しました。そういったケースの治療マネジメントの難しさに直面し介護サービスなどの環境整備も大事な医療のひとつだと強く思いました。そのため自分は、発作予防などの指導やエピペンの処方などを主体的に行わせていただきました。

そして、外科のみならず、他診療科のそれぞれの先生方もspecialistでありながら、generalistとして日々診療にあたっている姿に心を打たれました。

千厩病院の画像検査に関してですが、骨折や腰痛の多さを反映しておりMRIをとる敷居が低く読影のトレーニングを積ませていただきました。また、採血検査では院内の検査項目が限られており情報を他の項目で代用など勝手の違いに最初は戸惑いましたが自分の中で幅を作ることができとても良い経験になりました。

ICに関しても積極的に経験させていただき自分の経験不足と実力不足を痛感しました。患者さんがどのような言葉を望んでいるのか、どう伝えれば納得してもらえるのか、強く考えるきっかけとなりました。

当医療圏では3県立病院の連携のみならず、多くの医療機関とも連携が確立しており、当院にない診療科の疾患や多発外傷、満床の際の受け入れなど数多くの病院にお世話になりました。そのような病院機能の分担が地域医療を支えている事を知り、地域医療構想の考え方を身をもって学ぶことができました。

一方、超急性期医療に関しては、治療を進めるための時間的制約を考慮しなければならず、地域医療での限界を考えさせられることが多い研修でした。

また、昨今の医師の働き方改革の動きから、施設毎にある程度の医師数を確保する必要があり、今後は医師の集約化が進むと考えられ、地域医療との両立の難しさについて考えさせられました。

今回、研修する施設を変えることによって自分の力不足をより痛感しました。今後は自分の納得するマネージメントができる医師となるため東京にもどっても千厩で学んだことを忘れずに日々の診療を行いたいと思います。

① 国立国際医療研究センター 研修医 佐久間 真紀

 地域医療研修として泌尿器科で4週間お世話になりました。

 千厩病院泌尿器科は岩手県で2番目に多くの透析患者さんの管理をされていると伺い、内科志望でしたが泌尿器科で研修させていただきました。泌尿器科では、毎日の透析回診で何となく透析患者さんの管理を学べただけでなく、手術日には内視鏡手術の執刀もさせていただき、苦手意識のあった手術も楽しいと感じられ、外来では何人も排尿障害を診ることができ、おしっこが出ないということを真剣に考える機会にも恵まれ、とても充実した研修が送れました。

  千厩病院では、泌尿器科に興味が湧いただけでなく、病院経営・医療行政についても学ぶことができました。千厩病院は医師数も少なくとてもアットホームな雰囲気で、東京の大病院ではなかなか縁のない院長先生や副院長先生が気さくに話しかけてくださり、聞くと何でも教えてくださいました。千厩病院に限らず、被災地研修では高田病院の院長先生も1on1でお話くださり、合同勉強会では藤沢病院の院長先生のプレゼンもあり、色々と質問できました。

  私はこれまで「医療資源が限られている」と言われると、モノや設備を想像していましたが、地域医療では人的資源の重要性を学びました。高田病院では検査技師が2人しかおらず、当直を回せないため救急医療が提供できないという話を聞きました。千厩病院での1人当直では、正しい順番にこだわらず、検査にかかる時間と労力の最小化にも注意を向けることを教わりました。技師もまた1人当直だからです。医者は患者だけみていればいいと思っていましたが、千厩でチーム医療のリーダーとして、オーダーの先の作業のことも考え、少ない職員でも複数の救急患者に対応できる技が必要でした。人員確保も困難な状況なので、良い労働環境の構築という意味でも医師の果たす役割は大きいと感じました。

  また、理想に燃えた若者は儲けのことを考えるのは良くないと思いがちですが、地域医療においては、地域に一つしかない病院が赤字を出し続けて潰れると、病院が一つもなくなります。病院の職員は転職すればいい話ですが、地域にとっては一大事であり、一人の患者さんに対してコストを度外視した診療は、むしろ非倫理的ともいえます。医学的な「必要性」は医師の裁量が大きいので、病院の利益も考慮した「必要性」の解釈が長期的には一人の患者さんを超えた地域のためになるという視点もありなんだと思い、非常に新鮮でした。

  研修を通して、本当に病院が地域に根ざした公衆衛生の拠点であることが良くわかりました。超高齢化・過疎化が進む地域においては、Evidence-Based Medicineだけでなく、医療従事者をリクルートかつ離職させず、病院の収益を維持し、もはや完全治癒はしない超高齢の患者さんを抱えて医療を成り立たせなければなりません。日々の交流のなかで、岩手の先生方が、県レベルの視野を持って、様々な連携・新しい取り組みを打ち出される姿をみて、地域医療のやりがいや面白さを垣間見ることもできました。短い間でしたが、色々なことに気づかされました。ありがとうございました。

 

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